修学旅行

高校時代の出来事すら思い出せないほど、昔のことを覚えていない。というか、記憶の引き出しが2つほどしかなくて、比較的新しいことを入れるのともう当分使いそうにない古い記憶を入れる方があって、後者になんでもかんでも、昨日のことでも思い出したくないものからめちゃめちゃに放り込んでいたら大小様々な記憶が複雑に入り組んでひっかかってどれも取り出せなくなってしまった。いつも前者のぱっと手に取れて扱いやすい情報しか知らない。私は私をあまり信用していない。周囲にお前はこうだと言われたりしたら、ああ自分はそうなんですねと都度、適当に受け入れて過ごしているが、できれば私は私にとって都合がいいようにしていたいし、そうあることができなければ死にたくなって死んじゃうので、私は私に都合のいい私しか知らない。都合の悪い私を与えられたら無視してしまう。そういうのは2つ目の引き出しの奥に押し込んでしまってなかったことにする。嫌な記憶を勝手に消してしまうのだから虚言なんかと悪質さは変わらないだろう。好きなものに囲まれて暮らすのは最高なんだが。世の中の大半の人間にはもっと雑多に情報があって、いいこと悪いことひっくるめて噛み締め生きているのだろうか。

エッセイストとかコラムニストがたまに幼少期のエピソードを持ち出してちょっといい事を言っているけれども、あれが私には無理だ。幼少期どころか高校時代まで思い出せない。でもポケモンの名前と進化する条件は全部覚えている。それ以外わからない。増殖バグ技を教えてあげると言われてポケットモンスタールビーを貸したらなぜか大事なグラードンだけ消えた状態で返されたことは忘れていない。ラグラージが一番好きだったんだ。中学校に毎日制服で行くのと自分がブサイクなのが嫌すぎたこと、小さな悪戯だかいじめかを受けたのをきっかけに学校に行くのをやめてからネトゲ廃人になったこと、それからしばらく経って中学3年夏、依存しきっていたゲームも音楽もインターネットの世界も一切捨てて勉強しまくったらやっと入れた公立高校でもいじめられて行かなくなったこと、いじめの内容は実にショボくサッカー部の男子のジャンケンで負けたやつが私に一言話しかけてくるということ、忘れない。男性嫌悪に何年も苦しんだ。私が何もしてなくても浮いた存在だったからだろうし今もそうで仕方が無いけど私が語れる思い出話はマジでこれしかない。

おっと、いいことを思い出した。高3のころに大森靖子を聞きながらクソでかい真っ黒のカラコンをつけて化粧を覚えたのだけど、それはサブカルインターネットミームに染められた私が悲なみちゃんとももちゃん14歳になりたかったからだ。その時から私のIDはnununu14saiなのだ。

ちょっと昔のことを思えば見るに堪えない長文ばかり吐き出す私には、幼少期や学生時代ほのぼの話なんか語れる人間がわからない。信用できないのではない。何をしたら昔の中からいい話が出てくる?友達とは?友達ってなんだ?美術室にあるもので作れる?積んだ徳の数か?締切に負われるあまり記憶までも捏造したか?見栄を張ってなにかの本で読んだフィクションから引用した話ではない?お前らみんな嘘つきか?え、本当に?マジで?嘘をついて騙さないでくれ。

もう私のそばにいてくれるのは西村賢太だけだ。さようなら。